ブオーん

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 それでも、ジェスは沙紀の襟首をつかんだまま。沙紀も変わらず氷の微笑を非現実的な美貌に象っている。

「……この冷血と、兄弟? 馬鹿を言わないでくれたまえ、木一君」

「同感ね。化物と一緒にされたら反吐が出るわ」

 鉱物めいた二人の言葉に、幸一の顔は病人のように青くなっていく。膝を震わせながらもなお説得を続ける。

「え、ええと、主はこう言いました。汝の隣人を愛しなさいと」

「……木一君。どうしてここでキリスト教の話が出てくるのかね?」

「愚かなりにその知恵を使い、この状況を切り抜ける適切な方法を考えているのでしょうね。ただ哀れなのは、猿でも、もう少しうまい対応が思いつきそうなものなのだという」

 挑発に、応じたのは幸一ではなく、ジェス。眼を細め、沙紀を睨み付ける。

「馬鹿は死ななければ治らないという格言が、日本にはあるそうだ。貴様の為にある言葉だと思えるのだが、どう思う?」

「そうね、概ね同意できるわ。その対象が私ではなく、そこの彼であるというただ一点を除いて」

 ジェスの眼光に、怒りではなく、殺意に近い光が灯される。

「そうでしょう? 化け物に与するなんて、正気の沙汰とは思えないわ」

 その言葉に、ジェスの理性が飛びかける。右腕に満身の力が込められ……。

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