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円卓11

円卓11

後ろにいた幸一は、円卓の上に置かれたボールペンを取った。そしてそれを一挙動、自身の左腕目掛けて勢い良く振り下ろす。

 幸一の動作が視界に入っていたジェスは、沙紀の襟首から手を離す。常人の三倍近い機動力を発揮し、幸一の右手をガッシリと押さえ、その手からボールペンを抜き取り、即座に投げ捨てた。

「いきなり何をするのかね! 君は自分の体をなんだと思っている!」

 ジェスの怒号に、幸一はニヘラッと笑った。

「い、いや、その、こうすれば、ジェスさんが、彼女の襟首から手を離してくれるかなと思いまして……」

 正対する幸一の笑みを見て、ジェスは罰が悪そうに俯いた。

「……すまない。頭に血が昇っていたようだ。……僕は、先に失礼するよ」

 先程の鬼気迫る様子は跡形も無く、ジェスは肩を落とし、部屋を出た。

 途端に、幸一の膝がガクガクと震え出す。反射的に自身のしたことの恐ろしさが、実感を伴い始める。それでも幸一は床に落ちたボールペンを拾い直し、ジェスがサインした書類に、自分のサインを震えた筆跡で書き加える。

「あの……あ、ああいう事を言ってて、何が楽しいんでしょうか?」

 声は震えていたが、幸一にしては珍しい事に、眼には侮蔑の感情が灯されていた。

「楽しいように見えるかしら?」

 沙紀は唇の端を吊り上げ、冷たく返す。

 ……彼女と自分達とでは、精神構造が根本的に違うのだろう。

「……し、失礼しました」

 諭すのを諦めた幸一はジェスを追って走り出した。

「ジェスさーん、待ってくださーい!」

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